前社での社長としての私の使命の一つに、「この会社は違う」ということを一般の方々に理解していただくことがありました。
そのためには、自分たちが何を大切にし、どこを目指しているのかを広く知っていただかなければなりません。
今風に言えば、ブランドを築くことによって差別化を図るという、企業価値を高めるためにトップが率先して行うべき重要な仕事です。
当然のことながら、製品はその役割の重要な部分を占めます。
しかし、世の中に良いと言われるものはあまた存在します。
科学的根拠に基づく製品そのものの価値だけではなく、その製品の奥にある歴史や文化、人、その製品を通して何を目指しているか、そうした想いをトップ自らが発信することが大切だと考えました。
それを社長講演会や面談、SNSによるメッセージ発信などを通じて14年間続けてきました。
とても楽しく、充実感のある仕事でした。
仕事と言うよりも生きがいと言った方が良かったかもしれません。
きっかけは、アメリカ本社で社長のアドバイザーとして働いていた人からのアドバイスでした。
こう言われました。
「黄木さんは日本の社長として、黄木さんにしかできないことに集中してください。他のことはすべてスタッフに任せるべきです。それが黄木さんのためにも会社のためになるのですから」。
このアドバイスに従って「自分は社長として何をするべきか」をじっくり考え、それをそのまま実行できたことを本当に良かったと思っていますし、それに協力して業務を喜んで分担してくれたスタッフには心から感謝しています。
私には確信がありました。
前社にお世話になる前の10年間、天職だと思って嬉々として取り組んだグローバル・コミュニケーションと人材育成コンサルティング。
そこで学んだ原則やノウハウ、特に『7つの習慣』や『スピード・オブ・トラスト』から得た知識やスキル、生き方、また、ビジネス・トレーニングを通じて出逢った数多くの企業人の方々との経験は、必ずや自分がリーダーシップを任された組織のブランド価値を高め、信頼を寄せる方々の輪を広げていくと考えたのです。
14年にわたるこの取り組みは、私にとっての財産です。
このブランド戦略は会社のパートナーである多くのリーダーの方々の賛同を得て浸透しました。
他の多くの市場が衰退していく中で日本市場は健闘を続け、全世界の売り上げを下支えする市場となりました。
またメディアの間でも信頼できる企業としての評価を得ることができています。
間もなく退職から1年。
今度はこの財産を、枠を超えてもっとたくさんの方々のために使いたいと思います。
その準備が整いました。
来年がとても楽しみです。
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