「おおきなかぶ」

ここ2週間ほど子育ての話題をお送りしていますが、私にとっては以前から非常に関心の高い分野です。
考えてみれば子育ても人材育成の一つですし、「人の可能性を最大化する」という志を皆さまと共有している私としては、子どもたちの可能性をはぐくむことはとても大切なテーマです。

「子育てで大切にしてきたことは何ですか?」と聞かれることがよくあります。
皆さまでしたらどう答えますか。
私も5人の子どもを育てる中で数々の失敗と反省と決意を繰り返しながら、「今だから言える」と言うことがいくつかあります。

その一つが、読み聞かせの大切さです。
実は私の務め先が福音館書店の『こどものとも』シリーズの印刷を手掛けていた会社と取引があったことから、『こどものとも』シリーズの絵本を毎月いただいていました。
それを何度も何度も寝る前に読み聞かせました。
特に末娘が小さい頃は毎晩欠かさず読み続けました。
皆さまのお子さんもお孫さんもそうだと思いますが、文字は読めないのに絵本の言葉はすぐに一字一句覚えてしまいますよね。
疲れていて間違って読んだり飛ばしたりすると、すぐにチェックが入ります。

そんな絵本の中で私の子どもや孫たちの大のお気に入りと言えば、そうです。
『おおきなかぶ』です。
もともとはロシアの民話で、おじいさんが大きなかぶを抜こうとする話です。
抜けないので次々と助けを呼びます。
まずはおばあさん、次に孫娘、そして犬、猫、最後にねずみが手伝ってようやく抜けるという話です。
読む大人にとっては、繰り返しの多い、読んでいて疲れる話なので、なぜこの話が子どもたちに人気があるのかいまだに理解できません。
最後の「やっとかぶは抜けました!」という瞬間が楽しいのでしょうか。

でも最近、孫娘たちとこの話を読んでいて気づいたことがありました。
助けとして呼ばれる人や動物がだんだん小さくなるのです。
抜けるのは、最後に小さなねずみが加わった時です。
「小さなねずみの力なんて何の足しにもならないのに」と疑問に思いませんか?

でも、この話を「人の可能性」という視点から見たらどうでしょう。
人は独りではなく周囲の支えを受けて生きていること、そのどの支えが欠けても目的は達成できないこと、たとえ小さな存在でも大きな目的の達成のために貢献できること、助けの環は信頼関係のつながり、などなど。

最近、「品格の3本の柱」の1番目「不完全性の自覚からにじみ出る謙虚さ」が心に強く響きます。
「取り巻く人々の存在があって人はその可能性を最大化できる」と信じる人は謙虚な人であり、人を引き寄せます。
ねずみまで引き寄せたおじいさんのようになること、これが私の目標です。

 

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