「想像の力を活用する」

5月も半ばを迎え、九州地方では早くも梅雨入りの便りが聞かれるようになってきました。
私の大好きなアジサイも深い緑の葉を勢いよく茂らせています。
やがて大輪の花が美しい色彩で私たちの心を癒してくれることでしょう。
四季折々の自然の輝きは、日本という国に生を受けたことへの感謝の想いをかきたてます。
一昨年前まで今頃の季節は、郷里の山形で独り暮らしをする母に会いに行くのが恒例でした。
妻と一緒に東北自動車道を走る中で、車窓を移り行く山々の若葉の輝きに心を和ませたものです。
しかし、母が一昨年の秋に満100歳で天寿を全うしたのと、昨年からはコロナでこの時期の帰郷がかなわない状況です。

さて、最近のニュースで気づくのは、ホロコーストからの生還者であるビクトール・フランクルが自らの体験で証明した「人間だけに存在する4つの独特な能力」、すなわち「自覚・想像・良心・意志」を活用しないために失敗しているケースが散見されることです。
大変残念に思います。
中でも「想像」の力が発揮されていない事例の多さには目を覆いたくなります。
大半が、自分の発言や行動がどのような結果をもたらすかを少しでも想像する機会があれば防ぐことができたケースです。

「7つの習慣」のスティーブン・R・コヴィー博士は「想像」の力が「刺激」と「反応」との間にスペースを生むことを教えています。
子どもの頃の私は大変な短気でした。
母親や祖母からよく「手を出す前にまずは10数えなさい」と言われたものです。
素晴らしいアドバイスでした。
今でも、嫌なことがあると心の中で10数えることにしています。
わずか10数える間の時間ですが、コヴィー博士が言う「スペース」を心の中で体感できます。

現代社会は反応が瞬時にしかも国境を越えて広範囲に伝達される社会です。
だからこそ、話す内容や行動は吟味に吟味を重ねなければなりません。
メールやSNSの投稿など、その内容でいいかどうか、送信ボタンを押す前に10数えてみてはどうでしょうか。
読む人々がどんな気持ちを抱くか、どんな影響を受けるか、傷つく人はいないか、考えましょう。
受ける人々がどんな気持ちを抱くかを想像するのです。

「想像」の力はそれにとどまりません。
NHKの朝の連続テレビ小説『花子とアン』のヒロインである作家の村岡花子は、文章を生み出す力を「想像の翼」という言葉で表現しました。
私たちは自分の未来の姿を、時間や空間と言う枠を超えて想像することができるのです。
鮮明な想像が実現につながりやすいことは、多くのアスリートが用いる「イメージトレーニング」でも証明済みですね。

このような不安定な時代だからこそ、ぜひ想像の力を活用しましょう。
想像の力を使うことによっていろいろな課題や人々に共感を示すとともに、私たちが持つ潜在能力を少しでも開花させることができたらと思います。

 

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